塗壁が空気の"質"を整える?最新のナノ加工技術が生み出した新しい『塗り壁』とは?
テーマ:塗り壁
目次
1. まずは主な塗り壁の種類をおさらい
塗り壁とは、下地の上に土などの素材を荒塗り・中塗り・上塗りを何層にも塗って仕上げた壁のこと。最後の上塗りに土を塗って仕上げた「土壁」や、砂で仕上げた「砂壁」等がありますが、最近特に壁材としての性能が高い「漆喰壁」「珪藻土壁」の2種類が見直され人気が高くなっています。
この人気の理由はそれぞれの壁材の性能にあるわけですが、各社工夫を凝らした多くの種類が市場に出回っています。まずは、基本の塗り材についてみていきましょう。
漆喰壁
主成分は、消石灰すなわち水酸化カルシウム・炭酸カルシウムです。「石灰壁」から当て字での「漆喰壁」となり定着したもの。消石灰は石灰岩を土中釜等で「塩焼き」することにより焼成される生石灰から作られます。
石灰岩は、炭酸カルシウム【CaCo3】を50%以上含む堆積岩で、石灰藻や珊瑚、貝殻、石灰質プランクトン等、炭酸カルシウムで殻や骨格を構成する生物の屍骸が堆積・石化したものです。石灰岩は工業資源としての価値が高く、古くから採掘されており、日本で唯一自給できる鉱産資源です。
漆喰は塗ってから数年かけてどんどん固くなっていきます。不燃素材であるため外部保護材料として古くから城郭や寺社、土蔵等に用いられてきました。通常3-5mm、モルタルなどへの施工の場合は10数ミリ程度の厚さが要求されています。
主な特徴
・見た目はフラットで、ツルっとしている
・揮発性有機化合物(VOC)の吸着
・調湿効果は珪藻土に劣る(※1)
・脱臭消臭効果
・PH(ペーハー)が強アルカリ性のためカビに強い
・耐インフルエンザ
・火に強い(不燃材料)
(※1)一般的に漆喰や珪藻土は調湿効果があると言われますが調湿建材はJIS規格において70g/㎡以上の性能がある製品を指します。調湿性能を求められる方は基準として考えると良いです。
珪藻土
珪藻土の主成分、太古のプランクトン(珪藻)の遺骸が堆積したもので、ダイアトマイトともいう。主成分は二酸化ケイ素【SiO2】、二酸化ケイ素は融点が約1600度であることが、珪藻土の耐火性となります。多孔質なため、熱伝導率が低いので断熱性が高くなります。
多孔質なことにより得られる効果として、調湿性に優れている、断熱性が高い、耐火性がある、臭いや有害物質を吸着する、日本国内の産地としては秋田県、石川県、では海水産珪藻が、岡山県、大分県、鹿児島県では、淡水産珪藻が採取されます。
漆喰のように自ら固まるという性質が無い為、バインダー(固化材)が使われます。そのためバインダー(固化材)の接着剤などによって珪藻土の特長である多孔質の穴が塞がれてしまいその効果を発揮することができないケースがあるので、珪藻土を選ぶ際にはバインダー(固化材)の素材が何からできているのかということと、珪藻土の含有量を調べることは、大事な判断基準となってきます。
主な特徴
・見た目の表面がざらざらしている
・PH(ペーハー)が中性のためカビが生える可能性がある
・珪藻土が使われている
・耐火性能を活かし「七輪」の原料として有名
・最近では吸水性を活かした「バスマット」等が人気
・一般的に漆喰壁よりも調湿性に優れているとされる(※2)
・脱臭消臭効果がある
・火に強い(不燃認定の取得をしているところが多い)
・色が豊富
(※2)一般的に漆喰や珪藻土は調湿効果があると言われますが、調湿建材はJIS規格において70g/㎡以上の性能がある製品を指します。調湿性能を求められる方は基準として考えると良いです。
調湿性能について
調湿性能のある壁材の吸放出は、24時間単位の計測です。室内の湿気が多いときは壁の塗り壁材が吸収してくれて、乾燥すると湿気を吐き出してくれます。しかし、吸湿する量には限界があるので、「吸いっぱなし」ということではないのです。また、夏の間中「吸湿」して、乾燥した季節になったら吐き出すわけでもないのです。
つまり、乾燥した時期は、乾燥した時期なりに湿気が多い時期には湿気が多い時期なりに日々湿気を吸ったり吐いたりするのです。様々な観点から、「漆喰壁」「珪藻土壁」どちらのメリットも享受できるように各社配合やバインダーの素材選びを工夫することによってデメリットをカバーしメリットを増強している商品が出ています。
土壁
土壁に使用する土は日本全土で採取されますが、有名なものでは京都伏見の「稲荷山黄土」兵庫県淡路島の「淡路浅葱」など、地域の名称で呼ばれています。
聚楽壁
土壁の一種で京都西陣の聚楽第跡地付近から産出される良質な土を使う伝統的な土壁ですが、現在では、仕上がりの色(わずかに黒点や錆が出た仕上)等の聚楽風に仕上げた土壁の総称として使われています。
砂壁
色砂を糊液で練ったものを土壁の上塗りにしたもので、表面がざらざらしていて、こするとポロポロ落ちてきます。以前は、古いお家でたまに見かけることもありましたが、最近ではあまり見かけなくなりました。
プラスター
プラスターの和訳は「塗り壁材料」「左官材料」ですので、広義の呼称としては、漆喰を含みますが、多くは下記の2種類を指します。石膏を主成分とする「石膏プラスター」水硬性で、凝縮も速く、乾燥における収縮が少なく、亀裂が生じにくく、白雲母を焼いて水和熟成させた「ドロマイトプラスター」は、他の素材との混ぜ合わせが容易で作業性に優れています。
ジョリパット
ジョリパットとは、水溶性のアクリル塗料に砂を混ぜた外壁塗装剤で塗り壁の一つです。モルタル外壁にローラーやコテで塗りつける、もしくは薄めてスプレーで吹き付ける工法を取ります。安価なことと、色が豊富でデザイン性が高いことがジョリパットを選ばれる際の理由です。
2. 塗り壁が持つ「触媒機能」とは?
光触媒機能という言葉は近頃では随分メジャーになってきたのでご存知の方も多いかと思います。身近なところでは、光触媒コーティングされた造花など、その消臭効果や空気清浄機能を利用した商品を見かけます。また近年では光によらない触媒機能を持った「無光触媒」という新しい技術が広がり始めています。
そもそも触媒とはどういった意味を持つのでしょうか?「触媒」とは、その物質自体は変化しないが別の物質の化学反応を促進したり抑制したりする物質の事です。例えば、水素と酸素とは混合しても常温で反応しないが「白金黒」の存在で激しく反応する。この場合、「白金黒」は反応の前後で変化せず、このような存在を「媒体」といいます。では、外壁の塗料としてよく聞かれるようになった光触媒とはどういったものなのでしょうか?「光触媒」その名の通り、光を触媒にして化学反応を促す物質です。
最も有名なのが「二酸化チタン」を使った水の光分解触媒です。簡単に説明すると、酸化チタン電極に紫外線を当てることで発生する電子は強い酸化力があり、環境汚染物質や細菌類の微生物を、水と二酸化炭素に分解する。また、二酸化チタン微粒子を含む薄膜上では、紫外線を当てると水滴にならずになじみ、水の薄膜が出来る超親水性がある。以上のような点からセルフクリーニング機能があるとされ屋外での塗料などに含まれるようになりました。
以上が、光触媒の解説ですが、新しい触媒機能として「無光触媒」という技術が少しずつ有名になりだしました。光ではなく、主に空気中に含まれる酸素や水分と反応を起こしマイナスイオン(OH-)等を生成し、有機物分解性を発揮する技術です。
ここでE-FORCEという無光触媒を紹介します。E-FORCEは空気中に含まれる水分を触媒にホルムアルデヒドの分解を繰り返します。より多くの空気を当てることで、自動的に空気清浄を繰り返すのです。
3. E-FORCEの有害物質分解の仕組み
E-FORCEは、ナノ加工技術の発展により「銀」「電圧素子」「セラミックス」「アルミニューム」などを超微細化し、混合させた物質です。
1. 「セラミックス」+「アルミニューム」⇒静電放電
2. 放電時の微振動+「銀」「圧電素子」間で起こる電位差⇒マイクロ波放出
3. マイクロ波+水⇒抗酸化作用のあるマイナス水素イオン発生H2O→(H+)+(OH-)
この作用により、ホルムアルデヒドの分解を繰り返します。
(HCHO:ホルムアルデヒド) + (H2O:水) ⇒ (HCOOH:ギ酸) + (2H^+) + (2e^-)
(HCOOH:ギ酸) + (H2O:水) ⇒ (H2CO3:炭酸) + (2H^+) + (2e^-)
(H2CO3:炭酸) ⇒ (CO2:二酸化炭素) + (H2O:水)
結果として、ホルムアルデヒド分解後は二酸化炭素が一時的に増加。ただし、時間の経過と共に二酸化炭素も減少します。
4. NONSICKとは
空気の質を変えることが出来る、新しい内装仕上げ材です。
沖縄で採取する希少な風化造珊瑚礁と土中釜で塩焼きされた消石灰でできた塗材と、E-FORCE含有水によって造られます。風化造珊瑚礁とは、珊瑚の骨格が長い年月の間に風化し、波の作用で浸食され、緻密な空孔を持つ多孔質の素材で、湿気やにおいの吸着除去機能を持ち、人体や環境にやさしいマイナスイオンの発生効果が注目されている材料です。また、沖縄県が認めた海域から定められた量のみ採取可能であり、乱獲を防ぐために厳しい体制の下で管理されています。
消石灰は、日本の伝統的な石灰製造方法である土中釜で塩焼きされたものを使用しており、強アルカリで抗菌作用があり、カビやダニの発生を抑制します。NONSICKは、この沖縄の希少な風化造珊瑚礁と消石灰をブレンドした自然素材でできた塗材です。
NONSICKにより分解される有機化合物
・ホルムアルデヒド
・アセトアルデヒド
・トリメチルアミン
・酢酸
一般的な漆喰壁や珪藻土壁にはホルムアルデヒドを吸着する機能があるといわれますが、吸着した有機化合物はその後どうなるのでしょうか?
ホルムアルデヒドが吸着される量には当然ながら限界があります。環境によって何年で限界に達するかは当然違いますが、吸着量が限界を迎えるとホルムアルデヒドは、再び空気中に放出されるのです。家の中に有機化合物が発生するのは新築時だけではありません。近年では、建築基準が厳しくなっているので、建物から発生するホルムアルデヒドよりも心配すべきは家具の購入です。
住宅用建材としては禁止されているような規格の木材を使用した家具が安売りの量産市場では出回っています。そういった家具を購入してしまっては、何年にも渡ってホルムアルデヒドを発散し続けるといった事が起こりうるのです。しかし、NONSICKを壁に塗付することによって、室内に漂うホルムアルデヒドが分解されるというのは、とても画期的なことと言えるのではないでしょうか?
ホルムアルデヒド分解試験結果(クリックで拡大) ホルムアルデヒド・アンモニアの分解能力検証(クリックで拡大)